DV防止法

保護する人的範囲

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」、通称DV防止法は、2001年に議員立法で成立しました。
制定当時の問題意識は、配偶者からの暴力が、家庭という外部からの発見と介入が困難な場所で継続して振るわれ、エスカレートして重大な被害をもたらすものであること、これを放置することは、婚姻生活における暴力が夫婦の対等性を損ない、個人の尊厳を損ない、社会の男女平等の実現の妨げとなるというものでした。
しかし、婚姻していなくとも、生活の本拠を共にする・しか関係にあれば、そのような二者の間で起こる暴力が外部から発見されにくく介入が困難であるのは、配偶者の場合と何ら変わりはありません。

そこで2013年改正では法の適用範囲が拡大され、生活の本拠を共にする(同棲している)交際相手、同棲中に身体的・非身体的暴力を受けて同棲関係を解消した元交際相手を、夫・元夫に準じ、これらの者からの暴力被害者にも、同法でDV被害者に提供される法的保護や制度的支援を及ぼすことになりました。

ここでの「生活の本拠」というのは、「住所」すなわち「その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指す」とされ、「生活の本拠を共にする」とは、被害者と加害者がそういう意味の住所を同じくしパートナーとして一緒に生活することを指します。
すでにDV防止法には、10条に定める退去命令の要件として、「被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る」という条文があり、被害者が避難等のため一時的に他所に身を寄せていても、避難が一時的なもので、いまだ生活の本拠が移っていると言えない場合には「生活の本拠を共にする」状態が続いていると解されています。
すなわち、現行、退去命令の審理において、双方の日常生活に用いる家財道具・被服等があれば、実質的な生活が行われ、生活の本拠を同じくする状態が続いていると認められているので、交際相手との「生活の本拠を共にする」の認定に当たっても、同様に解されることになると思われます。

なお、ここで言う「生活の本拠を共にする交際」とは、夫婦のように性的に親密な共同生活を営む関係を指し、単なる学生寮・独身寮の僚友や、シェアハウスの同居人は含みません。

相続・一時保護・自立等の支援

DV被害者の保護と支援のために、都道府県及び一部市町は、婦人相談所その他の機関においてDV防止法が配偶者暴力相談支援センターとして定める機関を果たし、地域の関係機関や団体との連携を強化してきています。
交際相手からの身体的・非身体的暴力によって、心身に有害な影響を受けている被害者は、これら配偶者暴力相談支援センターにおいて、以下のような支援を受けることができます。

  1. 相談や相談機関の紹介
    配偶者暴力支援センターでは、被害者からのDVに関する相談に応じます。
    緊急性、危険性の高さ、被害者の意思心情を聴きながら、一時避難するか否かの相談に応じたり、子どもの虐待やDV以外の問題、経済的困窮や健康・福祉・在留資格や障害等の問題がある場合に情報提供したり、相談先を紹介したりなどの援助を行います。

  2. カウンセリング

  3. 被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護
    被害者と同伴者の一時保護は、婦人保護施設によるほか、一定の基準を満たす民間シェルターに委託して行う場合もあります。

  4. 自立して生活することを促進するための情報提供
    職業紹介・訓練・母子家庭等就業自立支援・生活保護・児童扶養手当・児童手当・保育所・就学援助や奨学金等の援助について、制度の利用の仕方を具体的に説明したり、関係機関を紹介したりします。

  5. 保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助
    保護命令の形式的要素であるDV防止法12条1項5号の相談をすることができます。

  6. 被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助
    婦人保護施設・母子生活支援施設への入所、民間のステップハウスの紹介などがなされます。

通報・情報提供

身体的な暴力を受けた被害者を発見した者は、警察への通報に努めることになっています。
また、医師その他の医療関係者が、診療業務等で、身体的暴力による負傷や疾病を発見したときは、このほか、医師等医療関係者は、被害者に、配偶者暴力相談支援センター等の利用についての情報を提供するよう努めることになっています。

警察本部長による防止上の支援措置

警察本部長等は、身体に対する暴力や脅迫を受けたDV被害者から申出を受けたときは、防犯上の支援措置として、次のような支援を行います。

⑴ 住所を加害者に知られないようにするための措置

  1. 住民基本台帳の閲覧制限への意見
    DV被害者がその登録した住所を加害者に知られないために、市町村は、住民基本台帳等の閲覧を制限し、写しの交付を拒否することができることになっています。
    警察は、DV被害者がこのような措置を市町村に申し出たときに、その必要性について意見を述べ、必要な制限を支援します。

  2. 行方不明届への対応
    DV加害者が、被害者の行方不明届を出して被害者を探そうとすることがあります。
    これに対して、警察は、DV被害者から援助の申出があれば、行方不明者届を受理せず、すでに受理したものについては、その行方不明者届についての登録・手配を解除し、以後加害者からの行方不明者届を受理せず、加害者には、被害者が規則所定の「行方不明者」に当たらないことを説明する対応を取ることになっています。

⑵ 被害防止措置の教示、加害者との交渉に関する助言・必要な連絡等

  1. 被害防止措置の連絡等
    被害者や同伴の子の安全に関わる情報の管理や被害の記録・証拠の保存等について助言します。

  2. 被害防止交渉の援助
    被害者が話し合いを望む場合に、安全な環境で交渉に臨めるよう、加害者への連絡・場所の提供のほか、交渉上、交渉後の対応について助言します。

保護命令

⑴ 保護命令のあらまし

DVは被害者が別れようとするときに危険が高まります。
迫る危険から被害者の身体的な安全を確保するため、被害者が裁判所に保護命令を申し立てることができます。

保護命令というのは、被害者の申立てを受けて、裁判所が、申立ての相手方(加害者とされた人)に対し、一定の要件のもとで、6か月間被害者へのつきまとい等を禁止したり(接近禁止命令)、被害者と一緒に生活している住居から2か月間退去するよう命じる(退去命令)民事の裁判です。
保護命令の違反には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という刑事罰が科せられるので、命令が効力を生じたあとの、接近や不退去といった違反行為は、警察が犯罪として取り締まることができます。
それによって、被害者は生命身体に対する加害から保護されます。

⑵ 保護命令の当事者、裁判所

保護命令を申し立てられるのは、DV被害者本人です。
DV加害者を相手方として、相手方の住所地、被害者の住所地・居住地、暴力、脅迫が行われた地を管轄する地方裁判所に申し立てます。

申立ての際、申立人の現在地など、安全に関わる情報を相手方に開示しない注意が必要です。
裁判記録は相手方が閲覧・謄写できるので、申立書をはじめ提出する証拠等には被害者の現在地などを安全に関わる情報を含めないように注意します。
裁判所との連絡や警察による違反行為の取り締まり等のためには、保護命令申立者とは別に、裁判所にこれらの情報を伝えます。

⑶ 保護命令の形式的要件

保護命令は、申立て前に警察又は配偶者暴力相談支援センターに、現に受けた暴力脅迫や今後もこれら被害を受ける危険、子どもや親族等についても保護命令を出してもらう必要がある場合にはその情報等についても相談しておき、保護命令の申立書にその相談に関する事実を記載します。
一方、警察や配偶者暴力相談支援センターは、DVに関する相談の記録を管理し、保護命令裁判所からの照会に対し回答することになっています。
これらの相談に代えて公証人の面前供述調書を添付することもできますが、ほとんど利用されていません。

警察等への相談等は、保護命令を得るための形式的な要件であり、常に必要です。

⑷ 保護命令の実質的要件

第一は、過去の危険な暴力です。
すなわち、過去に、DV被害者が、相手方から、身体に対する暴力、又は、自己の生命若しくは身体に対し害を加える旨を告知する脅迫を受けたことが必要です。
身体に対する暴力は、刑法上の暴行であって、かつ生命に危害を及ぼすものをいう、とされています。
「脅迫」の告げ方は、言葉によるとは限らず、態度・動作によるものでも、その意味が読み取れるものであれば、告知に当たります。

第二は、現在の危険です。
すなわち、相手方からの身体に対する暴力により、被害者の生命又は身体に重大な危害を受けるおそれがあることが大きいことが必要です。
これは、事実の具体的な危険性を考慮して認定されます。

この二つの要件は、いずれも、被害者が、口頭(被害の説明)なり、書面(診断書・被害の写真・第三者の報告書等)なりによって、証明しなければなりません。
民事裁判の照明は、すべての証拠と経験則に照らして、裁判官が、「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る」ことで足りるとされており、保護命令の審理においても、このような基準で、過去の暴行脅迫と現在の危険性が認められるなら、保護命令を出す、ということになっています。

⑸ 保護命令の種類と内容

保護命令の種類は、大きく分けて接近禁止命令と退去命令の二種類です。
接近禁止命令は、6か月間、被害者の住所(相手方と共に生活の本拠としている住居以外)、その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住所、勤務先その他被害者が通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁止するものです。
退去命令は、2か月間、被害者と共に生活の本拠としている住所から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないことを命じるものです。
被害者と加害者が同居しないストーカー事案では、接近禁止命令を活用します。

接近禁止命令が認められることを前提に、被害者は次のような拡張的な命令を求めることができます。

  1. 被害者に対する下記つきまとい行為の禁止
    接近禁止命令が効力を生じている期間中、下記つきまとい等を禁止する命令です。
    これらの行為は、ストーカー規制法第2条1項の2号以下に対応しています。
    つまり、電話・メールという通信手段を用いたつきまといの規制に関しては、ストーカー規制法の禁止命令の方が保護命令より厳しい内容になっています。

    1. 面会を要求すること。
    2. 被害者を監視していると思わせるようなことを告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
    3. 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
    4. 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて通信し、若しくは電子メールを送信すること。
    5. 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。
    6. 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
    7. その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
    8. その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

  2. 接近禁止の人的対象拡大-被害者が同居する未成年の子
    被害者が、未成年の子と同居している場合に、相手方がその子を連れ戻すと疑うに足りる言動をしているなど、その子への相手方の接近を禁止しておかなければ、被害者がその子に関することで、相手方と面会することを余儀なくされることを防止するため必要なときは、被害者の申立てにより、裁判所はその子への接近を併せて禁止することができます。
    すなわち、接近禁止の命令が効力を生じている期間中、その子の住居(相手方と共に生活の本拠としている住居以外)、就学する学校その他その子が通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない、ということを命じます。
    子が15歳以上であるときは、その子の同意を得た上で、命令を出すことになっています。

  3. 接近禁止の人的対象拡大-被害者の親族・支援者等
    被害者の親族や支援者など社会生活上密接な関係を有する者に対して、相手方がその住居に押し掛けて粗野又は乱暴な言動をするなど、その親族らへの相手方の接近を禁止しておかなければ、被害者がその親族等に関することで、相手方と面会することを余儀なくされることを防止するために必要なときは、その親族等の同意があることを条件に、被害者の申立てにより、裁判所はその親族等への接近を併せて禁止することができます。
    すなわち、接近禁止の命令が効力を生じている期間中、その親族等の住居(相手方と共に生活の本拠としている住居以外)その他の場所においてその親族等につきまとい、又はその親族等の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない、ということを命じます。

⑹ 再度の申立て

保護命令には期限があります。
接近禁止命令は6月ですが、その期限が来ても、保護命令を申し立てしなければならなかった危険な状態がなおも続いている場合には、再度、再々度と、禁止命令を求めることができます。

⑺ 保護命令の所用日数と効果

保護命令は、速やかに裁判をすることになっており、保護命令は、相手方に期日に言渡し、又は決定書を送達することで効力を生じます。
相手方が不服のときは、一週間以内に即時抗告を申し立て争うことができますが、即時抗告があっても、保護命令の効力は影響を受けません。

保護命令の手続きは、原則、相手方を呼び出し、その審尋を経て決定する手続を踏むこととされ、これまで申立てから平均12、3日程度で出るとされています。
相手方の審尋をしないで命令を出すことは、「その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるとき」に限られ、実務上極めて限定的に運用されています。

保護命令が効力を生じると、それの違反は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
保護命令違反にこのような刑事罰をリンクすることで、被害者の生命・身体への危害が発生しないよう、警察が取り締まることができる仕組みになっています。

被害者の人権尊重と安全確保・秘密保持の配慮義務と安全情報秘匿措置

DV防止法23条は、被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関わる者(職務関係者)が、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならないことを定めています。
危険から逃れるDV被害者が、法や制度に保護と支援を求めたときに、侮辱されたり差別されたりすることがあってはならないし、加害者が知らない被害者の現在地、勤務先や通院先など安全に関わる情報は漏れないよう最大限の配慮のもとで秘匿されなければなりません。

例えば、前述のとおり保護命令事件の手続きで、相手方は、被害者側から提出された申立書や準備書面、証拠はすべて、その副本(写し)を受領するほか、裁判所の事件記録を閲覧・謄写することができますが、被害者の連絡先は事件書類とは別に管理する、裁判所の手続のために被害者と相手方が接触する機会をつくらない、などの対応がなされています。
裁判や警察、相談等行政的な手続のため、被害者の安全に関わる情報が、相手方に漏れることがないよう、職務関係者も配慮して対応することが求められているのです。

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進捗状況等につきましては、チーム担当者からご連絡させていただきます。

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STEP5 トラブルの解決および解決後のアフターフォロー

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